SFNS, Lab. of Physics HOMEPAGE
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研究室の経歴および方針

20周年記念誌原稿  食品物理学研究室         2006.11.9

 本研究室は平成17年4月よりスタートし、平成18年4月より学生を受け入れ本格的に教育研究が始まった。現段階は準備期間であり、研究室の目指す方向、予定研究内容等につき見通しを述べる。
 食品物理学という分野ははっきりとした定義はまだ定着しておらず、研究者により考え方、内容が異なる。物理学を以て食品を研究する学問というのが一応の定義である。似通った分野として食品工学、食品物性学などがある。前者は技術的な側面にウエイトが置かれ、後者は物理学の一分野である物性物理学を食品にあてはめたものである。これらに比べると、食品物理学は幅が広い。この分野の草分けを目指して教育研究を進めたい。一つの方向として、さまざまな食品の特性を質の高い実験データを用い、統一的に理解することを目指したい。
 純粋な自然食品は自然界の生物であるので、その特性研究は生物物理学の範疇と重なっている。 加工食品は自然界の物を素材として人工的(過熱、冷却、圧縮、粉砕、等)に作ったものであり、その製造期間は自然界のもの(数十億年)に比べ短い。自然界の物としては動物、植物を含む。従い物性物理学の対象とする単純物質でない分、対象は豊富であり、研究は難しく思われる。対象のモデル化を工夫して対応していきたい。
 具体的には食品の力学物性、熱物性などから調べていきたい。前者では粘性弾性の測定とそのデータからの構造解析である。「食感」という言葉をよく耳にする。官能検査でそれを“測る”のが通例であるが、力学物性から科学的(定量的)に調べる。その目的のため高分解能クリープメーター(山電RE2-33005S)を一台新たに準備した。熱物性については食品の相転移現象に着目する。一つの身近な例はごはんの炊きあがりである。デンプンが糊に転移したのである。吸熱量、発熱量を調べることにより、お米の品質等を詳しく知ることができる。この目的のため高精度示差走査熱量計(SIINT, DSC6100)を一台準備した。
 電気磁気的な特性も大切である。電磁調理器、電子レンジ等家庭内には電磁機器で溢れている。食品を調理する際、その電磁気的特性を調べておくことが重要である。原子物性もナノ産業が幅を効かせてくるにつれ重要性を増すと予想される。食品産業の進展と共に教育研究内容は常に変化する。時代の要請に合わせて食品の特性を幅広く追求していきたい。
 すべて一からのスタートである。新しい実験装置、新しいテーマの開拓、等々。従い始めは手探りで進めることになる。早く教育研究体制を形作り、特色ある食品研究を目指したい。
 平成18年度は食品学科の熊木彩さんと栄養学科の野澤由紀さんが当研究室に入り、卒業研究を行うことになった。週一回のペースで、下記の本を読み、食品物理学の基礎を学んでいる。
「食品物性学 レオロジーとテクスチャー」 川端晶子 著 建帛社 1989年
「食品と水の科学」 野口 駿 著 幸書房 1992年
また二人の研究テーマはそれぞれ
「生クリームの起泡性に与える影響 デコレーションと口あたり」(仮題)
「ゲル化剤を添加したでんぷんゲルの調理 レオロジー的性質」(仮題)
である。